94年7月14日、ファーストリテイリングは広島証券取引所に株式を上場した。公募価格は7200円、初日には値かつかず、翌15日についた初値は1万4900円だった。「ここが出発点。ここまでやってきたことを元に、国内での決勝戦への出場資格を得た、ということです。現在、紳士服の郊外型専門店でおこっているようなことが今後、カジュアルの分野でもおきてくる。その中で、伸びる企業とそうでない企業が出てきます。決勝戦ですよ。今後、海外のマークス&スペンサーやGAP(ギャップ)が日本市場に入ってくる。ディスカウントストアもくる可能性があります。どこからどんな企業がきてもおかしくない。そういう海外企業と競争せざるをえなくなります。好むと好まざるとにかかわらず、日本市場はそうなる。これを頭に入れて行動しないと、日本においてさえ生き残れない。世界的に市場はひとつですから、当社としても何年か後には海外に出ていきたいが、まず生き残る企業になる。そのためにも国内で勝者にならないとダメ。国体で勝って、次はオリンピックにも出場したい。(株式上場で入る資金の使い道は)すべて出店費用に充てます。今8月期は31店の出店を完了しました。来期は今期と同様以上の出店をしたいと考えています。とくに関東地方と関西地方に重点をおいており、両地方をドミナントエリアとする企業をめざします。(今期中100店舗を超えた。次のステップは)300店ですね。現在のほぼ3倍。100店がきっちり運営できて300店が見えてくる。300店ができるようになれば、1000店も見えてくると思います。しかし、これはまだ夢の段階。まず足元を固めていくことです」ここで「現在、紳士服の郊外型専門店でおこっているようなこと」というのは、このころから郊外型紳士服専門店の勢いにかげりが見えはじめ、紳士服専門店の業態から、カジュアル市場への本格参入が相次いでいたことをさす。青山商事は94年10月に郊外型カジュアルの「キャラジャ」1号店を出している。ファーストリテイリングは、株式上場で得た約135億円の資金を基に、年間出店数をそれまでの30店から50店へ引き上げ、全国展開を視野に入れた。なお、ドミナントというのは、ある一定の地域を短期間に市場制圧するために、集中的に多数の店舗を同時オープンさせるやり方である。